愛知県常滑市は、日本六古窯のひとつに数えられる「常滑焼」の産地です。平安時代から続く窯業の歴史を持ち、特に急須の生産として広く知られています。この地はやきもの文化とともに独特の景観を育んできました。
皆さんはいつもどんな急須でお茶を淹れていますか?お気に入りの茶器をお持ちの方もいれば、家にある急須をなんとなく使っている方も多いかもしれません。実は、どんな急須を使うかで、お茶の味わいは大きく変わるんです。
先日、私たちは髙資陶苑さんを訪れました。工房に入ると、分業制で部屋ごとに工程が分かれており、歩いて回るたびにまるで制作過程のドラマを見ているような気分になりました。
型取りの工程では、土の状態を見極めることが大切で、季節や気温・湿度を読みながら、その日の状態に合わせて朝に水分量や配合を細かく調整されているとのことでした。
髙資さんの商標で陶製の茶こしである「ささめ」は、通常陶製の茶漉しであれば、触るとツルツルとしているのですが、ささめは触ると表面がザラザラとしているのが特徴です。この特徴がお茶のうまみを引き出します。この工程では専用の機械で一つひとつを丁寧に手作業で作られていたのですが、真っ直ぐに穴が綺麗に開く姿と、それを取り扱うテクニックに感動しました。
焼きの工程では、他のところで作られる急須は蓋と本体を別々に焼くことが主流ですが、常滑焼の特徴として、急須の本体と蓋を一緒に焼くというものがあります。そこでもくっつかないようにする工夫がありました。また、通常の工房では100個中2割ほどが出荷できなくてもおかしくない中で、こちらでは100個焼き上がった中で出荷しないのはわずか2個くらいとのこと。その手仕事の精密さに息をのみました。
さらに、蓋をぴたりと合わせるための工程も手作業で計3回行われており、とてもこだわりが詰まっていて、ぴたりと蓋がはまってぐらつかないのは、その技術の高さが関わっているとわかり、職人技の凄さを感じました。
どの工程においても、使う人の使いやすさを最優先に考えられていることが伝わってくる見学となりました。
手仕事を間近で見て、一見目立たない作業が持ちやすさや注ぎやすさを決める大切なポイントであることを学びました。お茶は茶葉だけでなく、急須によって最大限に味わいが引き出される――その理由を、現場で、肌で感じることができました。
職人さんたちの手仕事を間近で見て、お茶の楽しみ方がぐっと広がるように感じました。
厳選された良質な茶葉を扱う私たちだからこそ、こだわりが詰まった良質な急須で味わっていただきたいという思いがあります。その急須を大切に育てて頂きながら、茶葉の持つ本当の魅力を感じていただけたら嬉しいなと。そこで、実は現在、髙資さんにてPrelude Tea Companyの急須を製作していただいております!こだわりと技術が詰まったこの急須の完成を、どうぞお楽しみに!
また、常滑は招き猫の産地でもあります。訪れた梅月冨本人形園さんでは、表情豊かでかわいらしい招き猫が一つひとつ職人さんの手作業で丁寧に作られており、温かみや遊び心に触れることができました。現在5代目とのこと。長い歴史と急須づくりの現場に共通するのは、日常を豊かにするものを心を込めて作る姿勢です。思わず見入ってしまいました。